【イベントレポート】エース薬剤師の仕事と年収大解剖−成長する薬剤師とは−
2021年に開始された「奨学金返済サポート制度」についてご存知でしょうか?
新しい形の「奨学金返還支援」は、社員だけでなく企業にとってもこれまで以上のメリットをもたらす仕組みになっています。
「一人でも多くの方に利用してもらいたい」という思いから、この制度について簡単に解説したいと思います。
病院や薬局を経営されている方や人事に関わっている方へ
「これまでの制度と何が変わったのか?」
新しい制度は薬剤師だけでなく企業側にとっても大きなメリットがあります。
是非、今回の記事を読んでいただき導入を検討してもらいたいと思います。
奨学金を返済している薬剤師の方・奨学金を利用している薬学生の方へ
この制度は奨学金返済を行う薬剤師にとっての大きな支援になります。
今回の記事は病院・薬局の人事の方に読んでいただきたく作成する記事ですが、それ以外の方にも知ってもらいたい内容になっています。
特に、現在実際に奨学金返済を行なっている薬剤師の方や、奨学金を利用している薬学生の方は是非読んでください。
まずは薬剤師・薬学生を取り巻く奨学金に関するデータをまとめてみたいと思います。
奨学金の返済を行なっている薬剤師がどの程度いて、それがどの程度の負担なのか知っていただくことで、「新しい奨学金返還支援」の必要性を感じていただければと思います。
まずは「新しい奨学金返還支援」の利用者になり得る薬学生がどれくらい存在するのかイメージしてみたいと思います。
ぺんぎん薬剤師は大学(4年制薬学部卒です)・大学院の6年間、奨学金のお世話になりました。
記憶を辿ってみると、多くの同級生が利用していた気がします。
本来であれば薬学生のうち何割が奨学金を利用しています・・・ってお話をしたいのですが、具体的なデータが見つかりませんでした。
ですが、学部を限定しないデータが存在しており、このデータは薬学部に当てはめても大きな差はないんじゃないかと思うので紹介します。
この図で注目して欲しいのは一番上です。大学生のうち約半数が奨学金を受給しています。
言い換えれば、大学生のうち約半数が卒業後に奨学金の返済を行うということになり、薬学生もこれに準ずる状況であることが想像されます。
言い換えれば約半数の薬剤師が「新しい奨学金返還支援」の対象になる可能性があるということです。
次に「新しい奨学金返還支援」の必要性を考えるために、奨学金の返済が薬剤師にとってどの程度の負担になっているかをイメージしたいと思います。
まずは、奨学金の借入総額についてのデータです。
これについては医歯薬に限定したデータが存在しているので円グラフにして紹介します。
借入総額をみると最も多いのが200〜300万円未満、次が100〜200万円未満です。
ですが、400〜500万円未満、500〜600万円未満も多くなっていおり、平均借入総額は433.3万円となっています。
次に、毎月の返済額についてのデータです。
これについても医歯薬に限定したデータが存在しているので同様に円グラフにして紹介します。
最も多いのが10,000〜15,000円未満、次が15,000〜20,000円未満です。
ただし、30,000〜35,000円未満も10%以上存在し、平均毎月返済額は19,808円となっています。
借入総額の平均(433.3万円)と毎月返済額の平均(19,808円)から返済期間を計算してみると約18年という結果になります。
医歯薬の結果をそのまま当てはめるのはやや乱暴ですが、薬剤師のうち半数が約18年間 毎月約2万円の奨学金返済を行なっているということになります。
毎月の給与から約2万円の出費があり、それが18年間続くのは人生を左右する大きな出費です。
新しい奨学金返済サポート制度は2021年4月に開始された制度で、企業が奨学金の代理返還を行う制度です。
新制度ができる前から奨学金の返済をサポートする企業は存在しました。
奨学金の返済を行なっている薬剤師に対して毎月奨学金返済に必要な金額を手当として支給するような形です。
新しい制度では、企業が学生に代わって直接奨学金の返済を行います。
奨学金の返済を給与として支給するか、企業が直接返済するか。
新しい制度では、この返済方法の違いによって、学生、企業の双方にとってのメリットが生まれます。
薬剤師(社員)にとっての最大のメリットは代理返還分が所得税や社会保険料の対象外となることです。
従来の制度では「奨学金手当」のような形で給与として支給されていたため、所得が増加したとみなされていました。
本来の給与よりも課税される金額が増えてしまった結果、所得税や住民税、社会保険料が大きくなってしまい、奨学金の返済を行う薬剤師(社員)の負担となっていました。
ですが、新しい代理返還制度では、企業が直接返済を行うことで、奨学金返済に関する費用は返済者である薬剤師の所得とみなされず、所得税や住民税、社会保険料の対象になりません。
具体的な例をまとめてみます。
このように新しい制度を利用するかどうかで、社員である薬剤師の最終的な手取り金額に年間で16.2万円もの差がつきます。
この新しい制度は企業側にとっても大きなメリットがあります。
まず、代理返還は給与として支払うわけではありませんが、給与と同じく損金算入ができるため、法人税の負担が増加することはありません。
さらに、社員である薬剤師に所得として支給する金額を増やさず支援を行うことが可能なので、社会保険料等の事業主負担額が軽減できます。
上に示した薬剤師(社員)の場合と同じ条件に当てはめると、制度利用前の社会保険料負担は64.6万円、制度利用後の社会保険料負担は54.0万円ですので、年間約10.6万円の差になりそうです。
なにより、奨学金の返済を行なう若手薬剤師や薬学生を支援することは企業としてのブランディングに繋がります。
ぺんぎん薬剤師はこの新しい制度を導入する企業が一社でも増えて欲しいと思っています。
奨学金に対する悩みを抱えた結果、本来向き合うべきことに集中できない・・・。お金に対する悩みがキャリア形成の足枷となってしまう。そんな薬剤師を一人でも減らしていきたいです。
「奨学金代理返還制度」について、詳細な情報が知りたい方は是非、下記のリンクからご登録ください。
制度についてまとめた資料の請求と合わせて、企業の状況に合わせた具体的な個別相談を受けることが可能です。
この制度を知ることになった少し前、元実習生だった薬剤師から相談を受けました。
「ずっと夢見ていた病院薬剤師として働いていたんですが、結婚し、子供ができたことを機に転職を考えています。いまの給料だと奨学金を払いながら生活していくことが難しいんです。どこか給料が期待できる薬局はありませんか?」
正直、ショックでした。
せっかく薬学部を出て、自分の希望した職場に就職できたのに、奨学金返済を理由に転職を考えないといけないなんて・・・。
その直後にこの制度を知り「多くの薬剤師がこの制度を利用できれば、彼のような悩みを抱えることは減るんじゃないか?」と思いました。
課税免除の範囲が広がるだけでも、キャリアの選択肢を広げることができると思います。
多くの企業にこの制度を導入してもらうことで、奨学金の返済で悩み、夢を諦める薬剤師が減ることを期待しています。